Program Note プログラムノート 大渕雅子
R.シューマン (1810~1856):子供の情景 Op.15
シューマンは、文学的な思想と共に深化したともいえるドイツロマン派音楽を代表する作曲家で、ジャン・パウルなどの作品に傾倒するなど文学にも深い造詣をもち、評論の分野でも活躍しました。
シューマンは「子供の情景」について、「この曲集は子供のための曲ではなく、むしろ年とった人の回想であり、年とった人のためのもの」と語っており、シューマン自身で詩的なタイトルをつけた13曲から構成されます。かの有名な第7曲「トロイメライ」について、妻クララは「-トロイメライー それは美しい夢です」と語っています。
C.ドビュッシー(1862~1918):2つのアラベスク
19世紀末から20世紀にかけて、社会が大きな変革を迎えると共に、芸術にも大きな変化が起こりました。19世紀末のフランスでは印象派の画家たちが活躍しましたが、ドビュッシーは印象派主義をピアノ音楽で確立し現代音楽の扉を開きました。
「2つのアラベスク」は、ドビュッシーの26~29歳にかけての作品です。19世紀末から20世紀初頭に流行したアール・ヌーボー様式に見られる、花や植物の曲線を連想させる音形を持ち、優雅な雰囲気が漂います。アラベスクとは、本来イスラム美術における幾何学的模様を反復して作られている一様式を指し、「2つのアラベスク」も繰り返し用いられる様々なフレーズに彩られます。
R.ラヴェル:(1875~1937):水の戯れ
印象派音楽初期の名作と知られる水の戯れは、1901年ラヴェルが26歳のときの作品で、リストの〈エステ荘の噴水〉を意識したと言われています。「わが親愛なる師、ガブリエル・フォーレ」に捧げられ、「水に愛撫されて笑いさざめく河の神」という、アンリ・ド・レニエの詩句が題辞とされ引用されており、ラヴェルは、「水の音、噴水、滝および流れの音楽から感興を得たこの曲は、2つのモティーフによって構成されている。ソナタ形式の第1楽章にならっているが、古典的な形式をそのまま踏襲しているわけではない」と語っています。
R.シューマン=リスト(1810~1856・1811~1886):献呈
ロベルト・シューマンと妻クララとの愛の物語はロマン派史上最大のロマンスとして今なお語り継がれており、ロベルトが挙式前日にミルテの花でピアノを飾り、妻クララへ贈った歌曲集『ミルテの花』第1曲「献呈Widmung」を、リストがピアノ独奏用に華麗に編曲した曲です。後奏にシューベルトの「アヴェ・マリア」の旋律が引用されています。
F.リスト(1811~1886):愛の夢 第3番
ハンガリーに生まれたリストは、作曲家としてだけではなく「ピアノの魔術師」と称さるピアニストとしても知られています。「愛の夢」はドイツの詩人フライリヒラートの詩をソプラノのための独唱歌曲として1843年末頃に書かれた作品ですが、1850年にピアノ独奏曲として編曲されました。リストの作品の中でも最もポピュラーな小品の一つです。
F.リスト(1811~1886):バラード第2番 ロ短調
「バラード」とは元来、叙事的な性格をもつ物語風の詩やそれにつけた歌をさす言葉で、器楽曲の分野ではショパンによって確立されました。リストはピアノ独奏のバラードを2曲残しています。第2番は、ドイツのワイマールの宮廷楽長として指揮・作曲活動に専念していた1853 年に作曲されました。低音域の半音階進行の上でうたわれる息の長い旋律と優美で叙情的な旋律が劇的に展開される幻想的な曲となっています。